「賢明なオデュッセウス[ギリシア神話の英雄でホメロスの『オデュッセイア』の主人公]が愛するテレマコス[オデュッセウスの息子]と苦難をともにしたよりも、ワシントン氏がジョージと苦難をともにしたわけではないが、幼少期の真実への愛を育んでいる。『ジョージ、真実は若者の資質の中でも最も愛すべきものだ。我が息子よ、私はとても正直な心と純粋な唇を持つために我々が彼のあらゆる言葉に信頼を寄せることができる少年に会いに行くためなら50マイル[約80キロメートル]でも馬に乗って行くだろう。ああ、あらゆる人の目の前にそういう少年が現れたら何と愛らしいことだろうか。彼の両親は彼に目がないだろう。彼の親類は彼を誇りとするだろう。彼らの子供達に手本にしてもらいたいがために彼のことを絶えず誉めるだろう。両親は度々、彼を彼らに会いに行かせるだろう。いつでも彼は、まるで小さな天使のように喜んで受け入れられ、彼らの子供達の良き模範となるだろう』(と彼は言った)。『しかし、ああ、ジョージよ、嘘をつくような誰も言葉を信じないような少年に対してはどのような違いがもたらされるのだろうか。彼が行く所がどこであれ、反感で以って見られるだろうし、両親達は彼らの子供達に彼を会わせるのを恐れるかもしれない。ああ、ジョージよ、我が息子よ、おまえがこのような体たらくになるのであれば、心から愛するおまえを小さな棺に閉じ込める手助けをして墓場にやってしまったほうが喜ばしいくらいだ。私の周りを纏わりついている小さな足を持ち、愛情のこもった目と甘い囀りをして私の幸福の大きな部分になっている我が息子を捨てることは私にとってつらいことだ。しかし、私はおまえが下品な嘘つきなるくらいであれば捨ててしまうだろう』。『お父さん、僕が嘘をついたことがありましたか』(とジョージは真面目に言った)。『いいや、ジョージ我が息子よ、ありがたいことに、おまえは嘘をついたことがない。そして、私はおまえが決してそうしないことを心から願っている。少なくともおまえは私から見れば、そのような恥ずべきことをしなければならない後ろめたいことはないだろう。多くの両親達は、あらゆる小さな咎で子供達を野蛮にも打つことでこうした不道徳な行いを矯正しようとすることさえある。したがって、次に何か悪いことをした際、小さな恐るべき生き物は、ただ罰杖から逃れるために口から嘘を吐く。しかし、おまえ自身は、ジョージよ、私の前にいつも言っているように、今、おまえにもう一度言うが、もしおまえが何か間違ったことをたまたました時はいつでも、おまえはまだ経験も知識もない小さな少年なので度々、それは起こるに違いないが、決してそれを隠すような嘘をつかないように。我が息子よ、小さな男のように勇気を出し、それを私に告げるように。そして、ジョージよ、おまえを打つ代わりに私はそれで以っておまえを誇りに思うだけではなく愛すようになるだろう』。これは良い種を蒔くみたいだとあなたは言うでしょう。そうです。神のお蔭で穀物は、私がそうであると思うように、ある者が真実の親として、つまり彼の子供にとって守護天使として振舞えば育つのです。以下の挿話はその一例です。失うには非常に惜しく、疑うにはあまりに真に迫っています。というのは、私が恩義を受けている同じ素晴らしい淑女によって私に伝えられたからです。彼女は『ジョージが6歳頃、彼は手斧をたくさん持っていました。たいていの幼い少年達のように、彼は手斧が非常に好きで、行く手にあるすべてのものを絶えず切って歩きました。ある日、母のエンドウの支柱を切って度々楽しんでいた庭園で、不運にも彼の手斧の刃先が美しいイギリスの桜の若木にあたり、彼が恐ろしい叫び声をあげたので、その木よりも良い木を得られるとは思えないほどの木でした。翌朝、ワシントン氏が彼の木に何が起きたのかを発見しました。時にそれは非常にお気に入りで、家に来た時、気まぐれな創造主にもっと暖かくなるように求めたほどで、ギニー金貨5枚[6万3,000円相当]も惜しまないほどでした。誰も彼にそのことについて何も言えませんでした。やがてジョージが手斧を持って姿を現しました。彼の父は『ジョージよ、庭園のあそこにあるあの美しい小さな桜の木を切ったのはおまえか』と聞きました。これは厳しい質問でした。そして、ジョージは暫くの間、たじろぎながらも、すぐに立ち直って、全てを超越する真実の言いようのない魅力にその若く甘美な顔を輝かせながら彼の父を見つめて、勇敢にも『お父さん、僕は嘘をつけません。僕が嘘をつけないことはお父さんもよく分かっていますよね。私の手斧で桜の木を切りました』と叫びました。『愛するおまえよ、腕の中に飛び込んでおいで』と恍惚とした彼の父は叫び、『腕の中に飛び込んでおいで。ジョージよ、私は非常に嬉しい。おまえは私の木を切ったが、代わりにおまえは私に千倍も優るものを与えたのだから。そうした我が息子の英雄的行為は、銀を咲かせ純金を実らせるような何千本の木にも優るものだ』と言った』と語りました」 |