1項
行政権はアメリカ合衆国大統領に属する。大統領は、その任期を四年とし、同一任期で選任される副大統領とともに、次のような方法で選挙される。
2項
各州は、その立法府の定める方法により、その州から連邦議会に送ることができる上下両院議員の総数とひとしい数の選挙人を任命する。両院の議員、または合衆国政府のもとに信庄により、もしくは報酬を受けて官職にあるものは、選挙人に任命されることはできない。
3項
選選挙人は各自その州に会合し、秘密投票により二人を選挙しなければならない。そのうち少なくとも一人は選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人はすべて投票されたものおよび各人の得票の表を作り、これに署名し、証明を付け、封印を施して、上院議長に宛て、合衆国政府の所在地に送付しなければならない。上下議長は上下両院議員の立ち会いのもとに、すぺての証明書を開封し、次いで投票の計算を行うものとする。最多数の投票を得たもので、その得票が選挙人全数の過半数に当たるときは、これを大統領とする。過半数を得たものが二人以上に及び、得票が同数であるときは、下院はただちに秘密投票によりその一人を大統領に選任しなければならない。過半数を得たものがないときは、右の表のうち最多数を得たもの五人について、同一の方法により、下院が大統領を選任するものとする。ただし、大統領選任に当たっては、その投票は州を単位として行なうものとし、各州の議員団はそれぞれ一個の投票権を有するものとする。この場合の定足数は、全州の三分の二の州から、一人または二人以上の議員の出席によって成立するものとし、選任決定には全州数の過半数を必要とする。いずれの場合においても、大統領の選任が終わったときは、次に最多数の選挙人を得たものを副大統領とする。ただし、このような得票につき同数を得たものが二人以上あるときは、上院はその中から秘密投票によって、副大統領を選任しなければならなおい。
4項
連邦議会は、選挙人選の時期を定め、また選挙人が投票を行なう日を定めることができる。この日は、合衆国全土を通じて同じ日でなければならない。
5項
出生による合衆国市民、もしくはこの憲法採択の時に合衆国市民であるもの以外は、大統領に選ばれることはできない。年齢三十五歳に達しないもの、合衆国市民となって十四年にならないものは大統領となることができない。
6項
大統領の免職、死亡、辞職または大統領がその権限および義務を遂行する能力を失った場合は、その職務権限は副大統領に移転する。連邦議会は法律によって、大統領および副大統領の免職、死亡もしくは職務遂行不能の場合に、大統領の職務を行うべき官吏を定めることができる。この官吏は、これにより、右のような無能力の状態が去り、もしくは大統領が選任されるに至るまで、その職務を行うものとする。
7項
大統領はその労務に対して定時に報酬を受ける。その額は任期の間、増減されることはない。大統領はその任期の間、合衆国または各州から他のいかなる報酬をも受けてはいけない。
8項
大統領はその職務の遂行を開始するに先立って、次のような宣誓をしなければならない。「私は、合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽くして合衆国憲法を保全し、保護し、擁護することを厳粛に誓う(または確約する)」
1項
大統領は合衆国の陸海軍、ならびに合衆国の現役に召集された各州の民兵の最高司令官をつとめる。大統領は行政官庁の長に対し、それぞれの任務に関連するいかなる事項についても、文書による意見の提出を求めることができる。大統領は合衆国に対する犯罪について、弾劾の場合を除き、刑の執行延期、および恩赦を行う権限を有する。
2項
大統領は上院の助言と同意を得て、条約を締結する権限を有する。ただし、この場合には、上院の出席議員の三分のニの同意を必要とする。大統領は大使その他の外交使節と領事、最高裁判所判事ならびに、法によって設置されるその他すべての合衆国官吏を指名し、上院の助言と同意を得て、これを任命する。ただし、連邦議会は、下級官吏の任命権を、適当と認める形で、法によって、大統領のみに、もしくは司法裁判所、または各省長官に与えることができる。
3項
大統領は、上院の閉会中に生ずることのあるすべての欠員を任命補充する権限を持つ。ただし、その任命は次の上院の会期の終わりに効力を失う。
大統領は随時、連邦議会に対して連邦の状態についての情報を提供し、必要かつ時宜に適したと判断する措置についての審議を勧告することができる。両院の間で閉会の時期に関して一致を欠く場合には、大統領はその適当と考える時期まで両院を停会させることができる。大統領は大使その他の使節を接受する。大統領は法律が忠実に執行されるよう配慮し、合衆国のすべての官吏の任命を発令する。
大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、またはその他の重罪および軽罪につき弾劾され、かつ、有罪の判決を受けるときは、その職を失う。